どうも、にのみです。
起業を志している方や、創業期の支援をされる方にとって、重要な資金調達。
創業後1年で企業の約3割が廃業に追い込まれていますが、その理由の約60%の割合を占めるのが、「資金調達に失敗した」であり、いかに資金調達が起業時に重要かを物語っています。
そこで今回は、中小企業診断士として融資制度について学び、起業家として銀行融資を創業時に受け、インプット/アウトプット両方を経験している筆者が「起業時の資金調達」について解説します。
・起業を検討している人
・起業をして間もない人
・創業支援をしたい人
資金調達の方法は大きく分けて2つ
資金調達は色々ありそうですが、大別すると「エクイティファイナンス(Equity Finance)」と「デットファイナンス(Debt Finance)」のたった2つしかありません。
エクイティファイナンス(Equity Finance)
エクイティファイナンスは、「株式を発行することで資金調達する方法」です。
簡単に言うと、返済義務のない資金調達方法です。
エクイティ(Equity)とは「株式」のことを表します。
返済義務がなく、利息もないため、毎月の返済に追われずに経営に集中できます。
また、出資者は出資先の企業が成長すれば自身の株式の価値も上昇するため、積極的に会社にアドバイスをくれることもあるでしょう。
ただし、返済義務がないから株式による調達が必ずしも良いとは言えません。
株式比率によって会社の意思決定権が変わりますし、出資者は投資元本を超える利益を得ることを期待しているため、実は調達コストが高いと言うことも言えます。
特に創業期は株式に対する知識も少なく、「会社は株主のもの」と言う意識が薄いので、株式の分配については注意する必要があります。
【メリット】
- 返済の必要がない
- 資金調達先から積極的なアドバイスをもらえることもある
- 自己資本の増加で信用度UP
- 利息の支払いがない
【デメリット】
- 株式分配による経営者の権利の希薄化
- 株主増加によるコミュニケーションコストの増加
- 優遇税制の対象外になる可能性
デットファイナンス
デットファイナンスは、「銀行などからお金を借り入れて資金調達する方法」です。
簡単に言うと、返済義務のある資金調達方法です。
デット(Debt)とは「借金・負債」のことを表します。
デットファイナンスは、エクイティファイナンスのデメリットがメリットとなります。
会社の株式を渡す必要がないため、会社の意思決定に影響がないことや、返済が滞ることがなければ銀行側からプレッシャーをかけられることもありません。
また、利息は会計上、法人税を引かれる前に支払うものなので、節税効果も得ることができます。(エクイティファイナンスでの調達時の分配金は、法人税を引いた後の利益から支払われる。)
ただし、当然節税効果よりも利息の方が大きな金額となるため、あくまで節税効果は副次的なメリットとして考えておくのが良いでしょう。
一方で、デメリットもメリットと同様にエクイティファイナンスとは逆のものとなります。
【メリット】
- 意思決定に影響がない
- コミュニケーションコストが低い
- 節税効果になる
- 返済実績を作れば、会社の信用に繋がる
【デメリット】
- 返済の必要がある
- 自己資本比率の悪化となる
- 利息の支払いがある
- 個人保証の場合のリスクがある
創業期のエクイティファイナンスの調達方法
創業期のエクイティファイナンスの資金調達方法には大きく分けて3つあります。
【エクイティファイナンスの3つの調達方法】
1:自己資金
2:投資家からの出資
3:家族や友人からの出資
他者から調達する場合のエクイティファイナンスは、出資してもらって終わりではなく、様々な条件を設定したり、要求されたりするため、一義的に良い悪いとは言えません。
一方、手元に資金があり、出資額がそれほど大きくない場合は、自己資金はそう言ったしがらみもないため、3つの中では最もおすすめ度の高い調達方法と言えるでしょう。
1:自己資金
こちらは一番多くの方が活用するエクイティファインスの調達方法です。
開業される場合は、自分の手元の資金を「資本金」として会社に計上し、利益が出ない最初のうちは、その資本金を切り崩しながら事業を運営していくことになります。
その際の資本金金額が大きすぎるとで税金面で不利になったり、一方で小さすぎると社会的な信用が低くなってしまうので、ちょうどいい金額を考える必要があります。
2:投資家からの出資
投資家からの出資は借入とは異なり、株の一部を譲渡することで出資をしてもらうことになるので、エクイティファイナンスの調達方法になります。
また投資家には「VC(ベンチャーキャンピタル)」や「エンジェル投資家」などがいますが、投資サイズや事業フェーズなどは投資家によって様々です。
自身の事業フェーズや調達希望額に合わせた投資家にアプローチするのが良いでしょう。
3:家族や友人からの出資
家族や友人からの出資もエクイティファイナンスに入ります。
ただし借入の場合は、帳簿上はエクイティとして計上されていても、実質的にはデットファイナンスでの調達と考える方が正しいでしょう。
創業期のデットファイナンスの調達方法
続いてデットファイナンスの資金調達方法について紹介します。
企業経営をしていると、様々なデットファイナンスの調達方法が出てきますが、実は創業期に限れば、それほど調達方法は多くなく、下記の調達先でほとんど網羅されています。
【デットファイナンスの創業期の調達方法】
1:日本政策金融公庫
2:信用保証協会付融資
3:制度融資
4:プロパー融資
金利や借りやすさなどを考慮したおすすめ度も合わせて紹介しています。
日本政策金融公庫
おすすめ度:★★★
日本政策金融公庫は政府系の銀行であり、創業期には強い味方になってくれます。
独自に『新創業融資制度』というものを作ってくれており、下記のような様々な優待制度を提供しています。
<新創業融資制度の概要>
(対象)
新たに事業を始めるもしくは2期の税務申告を終えていない方
(融資額)
設備投資:1500万円、運転資金:1500万円
(優待制度)
①無担保・無保証人
②起業家への積極的な融資
③融資実行までが早い
通常の金融機関では、創業したてで融資をしてくれる銀行はほとんどない中、日本政策金融公庫はかなり積極的に起業家に融資をしてくれます。
また無担保・無保証人で融資を受けられる点も、経営者の精神衛生上も非常に良いですね。
ただし、1点デメリットがあるとすれば、冒頭で述べたように創業1年で多くの企業が廃業しているため、銀行側の融資リスクも高く、金利も高めに設定されています。
信用保証協会付き融資
おすすめ度:★★★
信用保証協会付き融資とは、「信用保証協会」という公的機関が金融機関が融資をする際の保証人になってもらった上で受ける融資のことです。
創業時に融資を検討する際には、日本政策金融公庫の新創業融資制度と併せて検討する方も多い融資制度です。
融資のスキームとしては、以下のように図で表されます。

基本的には取引先の銀行に行った上で、信用保証協会へ取り次いでもらうというのが多いです。
また現在は信用保証協会付き融資について、経営者が保証人となることを求めていますが、政府がスタートアップ支援の強化方針を示しており、近い未来に信用保証協会も個人保証なしで融資を受けられる可能性が高いです。
個人保証、創業5年不要に 「技術力」も担保対象―スタートアップ融資後押し・政府
制度融資
おすすめ度:★★☆
制度融資は保証協会付き融資制度に、「自治体」が絡んでくる融資制度になります。
イメージは以下の図のようになります。

県などの自治体を挟むことで、保証金の補填や返済の一部を補填、低金利での融資など、自治体によって様々な優遇措置があります。
保証協会付き融資を検討の際は、一度対象の自治体を確認してみることをお勧めします。
ただし、利害関係者が増えることは融資の決定が遅くなることに直結しますので、早急な融資が必要な場合は注意が必要です。
プロパー融資
おすすめ度:★☆☆
プロパー融資は上記の信用保証協会付き融資とは正反対の、「保証協会の保証が一切ない金融機関からの融資」のことです。
創業期にはほとんどこのプロパー融資の可能性はないと言えるでしょう。しかし、一部の銀行では起業家を支援するという意図で、少額ではありますが、融資に前向きな金融機関もあります。
例えば、きらぼし銀行は500万円を上限として、創業5年以内の事業者に融資を実行しています。
おすすめ度まとめ
ここまで様々な資金調達方法を解説してきました。
一度ここでまとめて見てみましょう。
【エクイティファイナンスのまとめ】

【デットファイナンスのまとめ】

まとめ
いかがでしたでしょうか?
創業期の資金調達は重要度が非常に高いです。
エクイティの出資比率やデットで調達するのか等ありますが、自身のリスク許容度を含めた調達方法を検討してみてください。
また国は創業に対して今後どんどん進めていきたい方針ですので、さらに調達しやすくなることも考えられますね。
今回の記事で、少しでも多くの人のためになれば幸いです。
またもしお困りごと、質問があればコメント欄やDMで問い合わせをいただいても構いません。