中小企業診断士全般

中小企業診断士の受験費・登録費・維持費ってどれくらいかかるの?現役の中小企業診断士詳しく解説!

中小企業診断士の受験を考えているけど、維持費はどれくらいかかるんだろう?どんなことをする必要があるんだろう?こんなお悩みありませんか?

筆者自身、税理士や弁護士などの維持費用は高いと知っていたので、受験前に中小企業診断士の維持費について調べた記憶があります。

そこで本記事では中小企業診断士の維持費に加えて、受験〜更新までの内容を含めた解説します。

なお、筆者は2021年度に登録した現役の中小企業診断士です。すでに独立しており、様々な中小企業の支援を行っています。

【この記事で解決できるお悩み】

・中小企業診断士の受験〜更新を含めた維持費ってどれくらい?
・維持費は高いの?他の士業との比較は?
・更新できない場合はどうすればいいの?

中小企業診断士の維持費について

タイトルにもあるように、中小企業診断士になるにあたって、「受験・登録・維持」の3つの費用がかかります。全体像は以下の様なイメージです。

これら3つの費用について詳しく見ていきましょう。

①受験費用

受験には様々なお金がかかります。以下、詳しく費用を見てみましょう。

テキストや資格の学校への通学費

受験勉強をするには大きく分けて、通学講座・オンライン講座・独学の3つがあり、講座を受講する場合は入学金や受講料が、独学の場合でもテキスト代が最低でも必要になります。

独学は合格のハードルが非常に高くなるので、オススメできません。

そこで筆者のオススメはオンライン講座です。

オンライン講座は、最近では通学講座に引けを取らないほどオンライン講座の質も上がっていると共に、合格祝い金を考慮すると独学よりも安くなるほどコストパフォーマンスよく受験勉強が可能です。

オンライン講座通学独学
費用
テキスト・講義の質
場所や時間的拘束
モチベーション維持

下記の記事で詳しく紹介していますので、気になる方はぜひご覧ください。

【中小企業診断士】おすすめのオンライン講座5選〜現役の中小企業診断士が解説!〜 取得したいビジネス関連資格の中で、常に高い人気を集め続けている中小企業診断士。 そして隙間時間に受講できるオンラインの講座の人気...

1次•2次受験手数料

試験を受験するのにも費用がかかります。

2次試験は1次試験合格者のみの受験となるため、それぞれに費用がかかります。

1次・2次受験手数料

1次試験受験料:14,500円
2次試験受験料:17,800円
合計・・・32,300円(R4年より改訂)

交通費や宿泊費

試験会場は、下記のように限られています。

【1次試験】札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇
【2次試験】札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡

これらの地域以外の方は、前泊の必要性があり宿泊費も大きくかかってくることや、交通費もかかると考えておきましょう。

養成課程

中小企業診断士の登録の際には、1次2次試験の合格要件がありますが、実は1次試験合格後、養成課程と呼ばれる学校に通うことで2次試験及び登録時の実務要件(後ほど詳細)の免除があります。

費用はおおよそ200万円〜300万円程度と、受験料と比較すると大きくかかります。

平日の夜からや土日を中心として開講するカリキュラムもあるので、社会人でも通学は可能となっています。

ただし、開講しているのは中小企業大学校や一部の大学や機構のみとなっているため、通うことが難しい方もいると思います。

②登録費用

続いて、診断士試験に合格した後には診断士協会に申請をして、診断士登録する必要があります。

診断士協会のHPに記載されている登録条件は以下のような記載があります。

中小企業診断士第2次試験に合格後、3年以内に実務補習を15日以上受けるか、診断実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録を行うことができます。

中小企業診断士協会HP

つまり15日間の実務を受けて、15ポイントを貯めることで登録でき、その方法には「実務補習」と「診断実務(実務従事)」があるということです。

また前述しましたが、1次試験後に養成課程に進学した場合は、2次試験合格と上記の実務要件を満たす必要がなく、そのまま登録が可能となります。

以上の内容を下記にまとめます。

種類内容コース開催時期費用開催地
実務補習総合診断5日コース2・7・8・9月60,000円7都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)
※8月は東京・大阪・名古屋のみ
15日コース2月176,000円7都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)
実務従事個別診断顧客次第顧客次第顧客による
養成課程演習・実習期間は学校による日程は学校による200〜300万円学校による

上記のように最も費用がかからないのは、実務従事で15ポイントを取得する方法です。

実務補習は受講費用に加えて、受験時と同様に7都市でしか開催されないかつ、5日の日程は2週に渡って行われるため、遠方の方は2週分の交通費や宿泊費を考慮しなければいけません。

よって、すでに顧客がいる場合は、実務従事で取得してしまうのが良いでしょう。

また実務従事と実務補習の大きな違いとしては、実務従事は基本的に1人で行うのに対して、実務補習は指導員の下で6人程度のメンバーで診断を行うという点です。

実務補習は費用がかかるものの、ベテランの中小企業診断士の先生が指導員としてつく形で診断業務を教えてくれるので、1度は受けておいて損はないと思います。

加えて、受験後の実務補習には、診断士の同期が多く参加するため、診断士仲間を作れると言った点もメリットです。

【実務従事がオススメの人】
・すでに、もしくは今後支援先の獲得の目処がある方
・実務補習開催地区から遠い方
・実務補習の日程確保が難しい方

【実務補習がオススメの人】
・支援先の目処がない方
・指導員の元で診断実務を学びたい方
・診断士仲間を作りたい方

③維持費用

晴れて登録までできたら、その後は定期的に更新する必要があります。

更新頻度は5年間ごと

中小企業診断士を継続するには更新要件が設定されており、その更新の期間は登録した日より5年間です。

また登録した時に、中小企業診断士登録証が交付されますが、有効期限は下記のように登録証にも記載があります。

筆者の中小企業診断士登録証

①知識補充要件

知識補充要件は5ポイントを取得する必要があり、下記の3つの選択肢を1回行う毎に1ポイントを取得できます。

  • 理論政策更新研修を修了
  • 論文審査に合格
  • 理論政策更新研修講師として指導

論文審査と理論政策更新研修講師を選択されることは少なく、ほとんどの方は理論政策更新研修を5年間の間に5回修了して更新しています。

そこで、ここでは理論政策更新研修について、以下に詳しく記載します。

<理論政策更新研修の概要>

【内容】中小企業政策や事業承継、デジタル化など様々な研修内容
【費用】1回あたり6,300円(中小企業診断協会主催分)
【形式】基本的にZoomオンライン
【研修時間】4時間程度
【主催】中小企業診断協会や大塚商会などの中小企業庁に登録された各研修機関が実施

上記のように1回あたりの費用は6,300円で、5年間で5回受講する必要あるので、1年あたりの維持費は6,300円となります。

必須の受講となっているので、座学ばかりでつまらないということはなく、様々な内容・様々な主催者から提供されており、勉強になるものも多いです。

資格更新年になって1回も受講しておらず、大慌てで受講されている方も多いので、興味があるものは積極的に参加して、1年に1回を目安にポイントを取得するのが良いでしょう。

②実務要件

更新の場合の実務要件は、実務ポイントを30ポイントを取得する必要があり、下記の3つの選択肢を1回行う毎に1ポイントを取得できます。

  • 実務補習を受講
  • 診断助言業務等に従事
  • 実習、実務補習を指導

実習、実務補習を指導する方は少なく、ほとんどの方は実務補習、診断助言業務等でポイントを獲得することが多いです。

この二つに関しては、前項で説明した通りですが、登録時と比べてポイントを2倍獲得しなければいけないため、計画的に取得する必要があります。

任意でかかる費用

ここからは任意でかかる費用について紹介します。

中小企業診断協会への入会

中小企業診断協会は各都道府県にあります。各都道府県によって入会費と年会費は異なりますが、おおよそ以下のような金額です。

中小企業診断協会の入会費と年会費

入会費:3〜5万円
年会費:3〜5万円

協会への入会は任意で、入らなければ活動できないこと等の不都合は一切ありません。

その上で、協会に入るメリットデメリットについて紹介します。

・人脈を作れる
・仕事を受注できる可能性がある
・様々なセミナーやプロコンサル育成塾の情報が手に入る
・診断士バッチを入手できる

・費用がかかる
・情報量が多いので、取捨選択が必要

診断協会に入会する一番大きなメリットは人脈を作れることです。

中小企業診断士は独占業務がなく、各診断士が自身の専門性を生かした業務を行なっています。

従って、仕事を取り合うというよりかは、専門家に繋ぐような横のつながりが強い士業です。協会に入会することで、そういった紹介に繋がる可能性は高まります。

デメリットは費用がかかる点で、特に企業内診断士の方は診断士業務になかなか時間が取れないと思うので、費用対効果は考えて入会した方が良いでしょう。

自己研鑽の費用

更新要件や協会の入会・年会費に限らず、自己研鑽の費用もかかります。

中小企業を支援する際には、自身が知らない分野や興味を持つ部分に対して学ぶ必要が出てきます。

そのような場合には、セミナーや勉強会の費用もかかるでしょう。

特に、独立を目指す方や独立したての方は、中小企業診断協会のプロコンサル育成塾に参加される方も多いです。いくつかテーマはあり、費用はおおよそ10万〜20万円ほどです。

比較的高いですが、仕事の取り方から提案内容までみっちり教えてくれます。

また協会内にも外にも研究会というものもあり、月1回程度の定期開催でおおよそ年会費6,000円で様々な事柄について学ぶことができます。

項目主催費用オススメの人
研究会への入会協会内外にある約6,000円/年・色んな分野を知りたい人
・診断士仲間を作りたい人
コンサル育成コースへの参加協会が主に開催10〜20万円中小企業診断士を本業としたい人
セミナーへの参加様々な主催者が開催セミナーによる情報のキャッチアップをしたい人
書籍様々な著者1000〜2,000円/冊全ての人にオススメ
合格後にかかる費用の例

年間費用の総額は?

ここまで費用について色々と紹介してきましたが、総額はいくらになるのかをまとめます。

項目内容費用最低費用
①受験費用テキストや講座50,000円82,300円
受験手数料32,300円
交通費や宿泊費(対象者のみ)
養成課程(対象者のみ)200〜300万円
②登録費用実務補習60,000万〜176,000円0円
実務従事0円(収益が上がることも)
③維持費用理論政策更新研修6,300円/年6,300円/年
自己研鑽(任意)協会費用8万円/年(東京協会)0円
研究会への入会約6,000円/年
コンサル育成コース10〜20万円

赤字のものが必須の事項となっています。

受験の際の初期費用は多少かかりますが、その後の維持費はうまくやればかなり抑える等れることがわかります。

中小企業診断士の維持費は高いの?費用対効果は?

中小企業診断士の支出として維持費を紹介してきましたが、収入面の考慮と、他士業と比較することで中小企業診断士を取得するコストパフォーマンスが更に見えてくるでしょう。

そこで、中小企業診断士の年収と他の士業との維持費の比較をしてみましょう。

中小企業診断士の年収は?

中小企業診断士の年収は以下のように中小企業診断協会から紹介されています。

年収レンジ中小企業診断士における割合(%)民間企業における割合(%)
 100万円以下9.368.43
101~200万円7.5413.78
 201~300万円8.1215.52
301~400万円7.4617.41
 401~500万円8.2914.57
501~800万円19.5521.11
801~1,000万円13.344.59
1,001~1,500万円14.663.34
1,501~2,000万円6.050.73
2,001~2,500万円2.070.25
2,501~3,000万円1.49NA
3,001万円以上2.07NA
中小企業診断協会民間給与実態統計調査

民間企業に勤めるより、比較的高収入なレンジのボリュームが大きいことがわかります。

また筆者の経験から、企業内で副業的に診断士活動をしていても、月に約10万円程度の収入(年間120万円)は稼げると思います。

更に、開業したり法人化することで、診断士業に関わる費用を経費計上できますので、民間企業に勤めて得る金額よりも節税効果で手取り額は多くなります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

中小企業診断士の年収が低いって本当?現役の中小企業診断士が詳しく解説! 中小企業診断士って稼げない資格と聞くけど本当はどうなの?独立しても問題なくやっていけるの?こんなお悩みありませんか? 筆者自身も...

他の士業との維持費の比較は?

他の士業の中には、協会に入らないと活動できない場合や更新の要件が更に厳しい場合もあります。下記にそれぞれの士業の最低維持費についてまとめました。

中小企業診断士税理士社労士行政書士
初年度の費用(※1)0円(※2)292,000円〜316,000円132,000円〜276,000円255,000円
毎年の維持費(※1)6,300円117,000円〜141,000円96,000円72,000円
業務上の
登録の必要性
無し有り有り有り
※1:各協会の費用は東京都で統一している
※2:他の士業と条件を合わせるため、受験に関する費用は考慮しない

独占業務がない分、中小企業診断士は登録免許税や登録手数料がかからず、初年度の費用は抑えられると共に、唯一協会に登録しなくても活動が可能です。

毎年の維持費に関しても、協会に登録していても東京協会であれば年会費5万ですので、他の士業より安くなっています。

このことからも、会社員には中小企業診断士が人気であり、副業的に稼ぐにはぴったりの士業であると言えますね。

更新できなかった場合の対処法

中小企業診断士は5年に1度の更新要件がありますが、会社員の方が本業で忙しくて実務要件をクリアできない場合もあると思います。

その対処法としては、休止制度を利用することです。

休止申請を行うことにより、最長15年の休止期間を設けることができますので、この制度を利用して資格の失効をしないようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?中小企業診断士の維持費の全体像は理解できたでしょうか?

中小企業診断士は独占業務がない分、登録免許税がなかったり協会等への登録義務がなく、他の士業と比較しても維持費は抑えることができます。

実際の収入を考慮してもコストパフォーマンスの高い資格と言えますので、ぜひチャレンジしてみてください!