本記事はフェルミ推定の基礎編を理解した上で見た方が理解が進むと思いますので、まだそちらを見ていない方はまずは基礎編からご覧ください。

今回は応用編として、詳細な手順と例題を紹介していきます。
フェルミ推定の考え方の手順
基本編の記事ではブレイクダウンしていくこと考え方の重要性を紹介しましたが、今回は更に詳細なフェルミ推定の解き方の手順を見ていきましょう。
<フェルミ推定の解き方>
1. 前提条件
2. アプローチ設定
3. モデル化
4. 計算
5. 現実性検証
今回の詳細なフェルミ推定を行うにあたって、以下の問いについて考えてみましょう。
Q.日本のスマートフォンの台数は?
1. 前提条件確認
まずは出題に関して前提条件を合わせます。
ここが出題者の意図と合わなければ全く異なった結果となってしまうので、必ず前提の確認をしましょう。
1. すでに所有されているスマートフォン
2. 販売中のスマートフォン
日本にあるスマートフォンというと、上記の二つがあるかと思います。
ここではMECE(漏れなくダブりなく)を意識しましょう。
何を意図して推測したいかでここの前提条件が変わってきますが、単純に販売中のスマートフォンの予測はスマートフォンを販売している会社がどれくらい製造しているかという、かなり推定のしずらい数値になります。
従って、1のだけに絞って推測しよう。といったような前提条件を合わせる作業が必要になってきます。
また、このように計算や考え方簡略化のために、概算値を使っていくことはフェルミ推定を行う上で重要です。
2. アプローチ設定
ここは実際にどのように求めたい数値を計算していくのかを言語化した式を作成するステップです。
最初はこの後のモデル化との区別がつきにくいですが、慣れてくればなんとなくわかりますので、そういうものかという程度で大丈夫です。
スマートフォンは仕事で二つ使うということがない限り、2つ以上所有する可能性は低いと考えられます。
従って、単純に一人一つ持つと考えると、
(スマートフォンの数)=(日本の人口)×(スマートフォンの所有率)
という風に計算ができるはずです。
これがアプローチ設定です。
3. モデル化
アプローチ設定で得られた式を更に細分化していきます。
アプローチ設定で求められた式を細分化すると、以下の様になると思います。
(各年代のスマートフォン数)=(各年代の人口)×(各年代のスマートフォン所有率)
(全体のスマートフォン数)=(各年代のスマートフォン数の合計値)
ではここから細分化した各項について、詳細を見ていきましょう。
①各年代の人口
各年代の人口比は以下のような2:3:3:2ツボ型になるとします。

日本の人口は約1.2億人ですから、これらを人口比に対して分配すると、
0~20歳:1.2億人×0.2=2400万人
20~40歳:1.2億人×0.3=3600万人
40~60歳:1.2億人×0.3=3600万人
60~80歳:1.2億人×0.2=2400万人
となります。これで各年代の人口数が分かりました。
0~10代 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代~ | |
人口 | 1200万 | 1200万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1200万 | 1200万 |
②スマートフォンの所有率について細分化
スマートフォンは現代社会ではかなり普及しており、性別に関わらず20~40代はほぼ100%の所有率だと考えられる一方、10代以下、50代以上に関しては所有率が下がるというのが感覚的にしっくり来るのではないでしょうか?
その感覚を基に、以下のようになると推測します。
0~10代 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代~ | |
所有率 | 10% | 70% | 100% | 100% | 100% | 90% | 75% | 50% |
この数値はご自身の感覚値になります。フェルミ推定をこなしていくうちに、この辺りの感覚値も研ぎ澄まされていきます。
となります。これで各年代の人口数が分かりました。
まとめ
ここまでをまとめると以下の表のようになります。
0~10代 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代~ | |
人口 | 1200万 | 1200万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1200万 | 1200万 |
所有率 | 10% | 70% | 100% | 100% | 100% | 90% | 75% | 50% |
ここまでくれば残りは計算を残すだけです。ステップ4に移りましょう。
4. 計算
(各年代のスマートフォン数)=(各年代の人口)×(各年代のスマートフォン所有率)
を基に、各年代のスマートフォン数を求めると、
0~10代 | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | 70代~ | |
人口 | 1200万 | 1200万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1200万 | 1200万 |
所有率 | 10% | 70% | 100% | 100% | 100% | 90% | 75% | 50% |
スマートフォン数 | 120万 | 840万 | 1800万 | 1800万 | 1800万 | 1620万 | 900万 | 600万 |
という数値が算出されました。
(全体のスマートフォン数)=(各年代のスマートフォン数の合計値)
より、各年代におけるスマートフォンの数を足し合わせると、9480万台となりました。
現実性検証
最後にフェルミ推定で最もドキドキの瞬間です。実際の数量との比較をしましょう。
ここでは2017年の総務省から出されている「数字で見るスマートフォン利用状況」を参照すると、LTEの契約数は1億219万台でした。
いかがでしょうか。誤差は1割程度の差で概ね近い値と言えるでしょう。
ただここでは単に○×だけで判断すべきではありません。
特にここで桁が違うレベルの誤差が出た場合は、どこで大きくずれてしまったのかという検証がこのフェルミ推定で最も重要です。
今回はであれば、法人用に2台している人もいるという想像をして、1割程度の誤差は許容できる範囲ではないかと想像できます。
誤差が出てしまったところはどこなのか、実際の数値はどのような値なのか、アプローチ設定からミスをしていないか等を検証することで、次回以降のフェルミ推定の精度が大きく変わりますし、世の中の現状を知るということもできます。
検証作業は少し面倒かもしれませんが、必ず行うことをおススメします。
フェルミ推定をする時のコツ
計算を簡単にしよう
フェルミ推定は物事の概算値を与えてくれるものです。
従って、計算しにくい端数に関しては無視してしまいましょう。
例えば960万人を1000万人としたりすることは、素早くフェルミ推定を計算する上で必須のテクニックです。
概算値を使うときは上下限を意識しよう
フェルミ推定では感覚値を使うことが多いです。
こういったときに、ポイントなのは大きく外さないことです。
その際に必要なのは、これ以上は大きくない or 小さくないという上限値下限値です。
・神奈川県の人口:東京の1200万人より少ないはず
・ラーメン屋の回転時間:入店から退店までは短くても15分、長くても1時間
・スマートフォンの所有数:1つが大半。0〜2と考えるのが妥当。
時間を意識しよう
概算値を入れるフェルミ推定は答えが手元にはないので、いろんな考えができ、時間を消費してしまいがちです。
そういった場合は、②の上下限値を意識しながら、えいや!で決めるしかありません。
最初は外れてしまうかもしれませんが、時間を常に意識すること+知識を身につけることで、段々と精度は上がります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
就職試験でよく問われるフェルミ推定ですが、日常生活の様々な題材がフェルミ推定の問題になりえます。
まずは身近なものを推定材料として、やってみると楽しい発見があるかもしれません。
是非、取り組んでみてください。
今回は以下の図書を参考にしました。フェルミ推定を更に学びたい方はぜひご覧ください。