中小企業診断士における1番の難関である2次試験の内容や対策を始める時期について解説していきます。
実際の試験が気になる方は、中小企業診断士協会のHPにも問題が載っているので、見てみてください。
https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html
2次試験の内容とは?
2次試験は4つの事例に大別されます。
<2次試験の試験内容>
事例Ⅰ 組織・人事
該当科目:企業経営理論
事例Ⅱ マーケティング・流通
該当科目:企業経営理論・運営管理
事例Ⅲ 生産・技術
該当科目:運営管理
事例Ⅳ 財務・会計
該当科目:財務・会計
各事例とも80分の試験時間で、記述式の試験になります。
まずは各事例とも与件文という企業の様々な情報が記載された文章(1~4ページ)を与えられ、それを基に設問(4~5問)に回答していくというのが全体の流れです。
求められる能力は記述力・計算力・タイムマネジメント力です。前者二つに関してはしっかり対策される方が多いのですが、本番では意外とタイムマネジメント力がメンタルに響いて、結果を左右したりします。
合格基準は1次試験と同様に、40点未満の科目がないかつ、240点以上(各科目平均60点)となっています。
1次試験と異なる点は、科目合格はないという点がないことです。また協会からの模範解答もなく、受験後は自己採点もできずにドキドキする毎日を過ごします。
事例Ⅰ 組織・人事
この事例は組織(人事を含む)を中心とした 経営戦略および管理に関する事例で、関連科目は企業経営理論です。
企業はヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を駆使して戦略を打っていきますが、この事例では特にヒトにフォーカスを当てて回答していきます。
従って、出題の会社も家族経営であったり、硬直した組織で革新的なことを出来ていないような会社が題材になっています。
また1次試験で抽象度の高い科目であった企業経営理論が中心となる事例なので、苦手意識を持つ人も多い事例です。
事例Ⅱ マーケティング・流通
この事例はマーケティング・流通を中心とした 経営戦略および管理に関する事例で、関連科目は企業経営理論・運営管理です。
マーケティングフレームである「だなどこ(誰に・何を・どのように・(得られる)効果)」を使って、企業の売り上げ向上を目指していく事例です。
与件文にはたくさんのターゲットが散りばめられており、適切なターゲットを選択し、適切な施策を回答する必要があります。
従って、ターゲット選定をミスしてしまうと大減点となるので、筆者は2次試験の中で最も怖い事例と思っていました。
事例Ⅲ 生産・技術
この事例は生産・技術を中心とした 経営戦略および管理に関する事例で、関連する科目は運営管理です。
出題される会社は設備を持つ製造業の会社が題材です。
この事例の経営者はちょっと天然経営者で、誰がどう見ても指摘できるよくないことをたくさんしてしまっており、回答はそのダメな点を設問で全て潰していくようなイメージになります。
受験生の中では比較的得意としている人も多く、筆者もTACの講師に事例Ⅲは一番最初にできるようになるといわれました。
また他の事例より問題文・設問共に少し長めになっています。従って、タイムマネジメント力がより重要な事例であるとも言えます。
事例Ⅳ 財務・会計
この事例は財務・会計を中心とした 経営戦略および管理に関する事例で、関連する科目は財務・会計です。
出題される会社は様々で、与件文はそれほど多くありませんが、その代わり財務諸表が与えられます。
5割以上計算問題になることが多いので、4事例の中で最も受験前にこれくらい取れるかな~という得点予想をしやすい事例です。
計算が得意な人にはもちろん、苦手な方も問題に複数回取り組み、計算の中身を理解することで高得点も取れる事例ですので、4事例の中で最も時間をかけるべきです。
またこの事例に取り組むことで、財務諸表を読むことができるようになるので、様々な会社の財務諸表を見ることによって、世の中の解像度が高くなるので、日常生活が非常に楽しくなります。
全ての事例に共通すること
ここまで各事例の内容を記述しましたが、全てに共通するフレームワークはSWOT分析です。
<SWOT分析>
強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字を取った分析方法。企業の内部環境・外部環境を分析する際に用いられるフレームワーク。
中小企業は経営資源が豊富ではなく、生き残るためにはニッチな大企業が入ってこないような市場に、キラリと光る強みをぶつけなければなりません。
各事例とも回答の流れはありますが、中小企業ということには変わりないので、この軸を絶対にぶらさずに記述することが最優先です。
そういった意味ではSWOT分析の範囲である企業経営理論は、全ての科目に関わる最重要な科目であるといえるでしょう。
2次試験の対策開始時期は?
1次試験を勉強されている方は、2次試験の勉強のタイミングというのは非常に気になるのではないでしょうか?
結論から申し上げると、「2次試験の勉強は1次試験が終わってからで問題ない。」です。
参考程度に1年間のスケジュール感をご覧ください。
筆者の1年間のスケジュール感(TAC通い)
12月初旬~5月初旬:1次試験の講義受講
5月初旬~7月初旬:1次試験の演習期
1次試験後の1週間:中休み
7月中旬~7月下旬:各セミナーに参加したり、情報収集し、大まかな戦略決定
8月初旬~10月下旬:過去問や学校の演習、事例Ⅳのテキストを取り組む
上記のように、筆者が勉強した期間は8月上旬~10月下旬の約2か月半です。今年は1次試験と2次試験の間が長くこれくらいの勉強期間でしたが、例年通りだとしても、1次試験終了後に2次試験の勉強をスタートしていたことになったと思います。
筆者が1次試験終了後に2次試験に勉強するべきと思う理由は、以下の3つです。
①1次試験に合格しないと2次試験の受験権利が得られない
2次試験の勉強に集中したがために、1次試験落ちるという事態は絶対に避けたいです。まずは1次試験に合格することに集中し、その後最悪勉強が間に合わなくとも、1次試験に受かっていれば翌年・翌々年も受験チャンスはあります。
②覚えなければならない知識の絶対量が1次試験より少ない
2次試験は1次試験に比べると、覚えておく知識量は圧倒的に少ないです。1次試験突破者は基本的な知識は出来ているので、2次試験ではそこに肉付けをしていく程度で十分です。
③時間をかければ合格するという試験ではない
2次試験の難しいところは、国語の問題に近いので、闇雲に勉強時間だけを積み上げても合格は出来ません。2次試験は戦略が重要で、情報戦でもあります。1次試験終了後、受験生支援団体がセミナー等をたくさん開いてくれますので、そこで情報を集め、戦略を立てることが合格への最短ルートです。
ただ以上の理由があるとは言っても、1次試験終了後もかなり時間に追われます。もちろん1次試験に超余裕がある方は2次試験と並行して勉強するのもありかと思います。
資格の学校では2次試験を知ろう的な演習が、1次試験の講義が一通り終わったタイミングの3月ごろに1度あったりします。
しかし、社会人の方は毎回講義に出て、復習して、演習するといったサイクルを予備校と並行して出来る方は意外と少ないかと思います。
1次試験は待ってくれません。従って、学校でそのようなカリキュラムになっていたとしても、そこはスパッと切って、戦略的に受講しないという選択肢はありだと思いますし、筆者は全く1次試験の余裕がなかったので切りました。
・2次試験の勉強は1次試験が終わってからで問題ない。
・1次試験は待ってくれない。まずは1次試験の勉強に重点を置こう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
2次筆記試験は中小企業診断士試験の最難関です。しかし、だからと言って焦ってとりあえず勉強するのは禁物です。
2次試験は情報戦であり、その情報を基に戦略を立てるのが合格への最短ルートですので、焦らずまずは1次試験の対策に全力を注ぎましょう。
それではまた!