中小企業診断士の受験を考えているけど、難易度がどれくらいなんだろう?何時間くらい勉強時間を確保すればいいんだろう?こんなお悩み抱えていませんか?
筆者自身、中小企業診断士を受験するにあたって、難易度や勉強時間に対する不安があり、ネット検索や周囲の方に情報をたくさん聞くことで、不安を解消していました。
そこで、本記事では他の資格と比較した中小企業診断士の難易度や勉強時間を紹介します。
なお、筆者は2021年度に登録した現役の中小企業診断士です。実体験を踏まえた難易度や勉強時間について解説していきます。
【この記事で解決できるお悩み】
・中小企業診断士の合格率と難易度はどれくらい?
・受験勉強の時間はどれくらい必要?
・他の資格との比較は?
・合格するためにはどんなことが必要?
中小企業診断士の合格率は?
資格取得の難易度を測る上で、合格率は一つの判断基準として考えられるでしょう。
中小企業診断士試験は1次試験と2次筆記試験、2次口述試験に分かれており、おおよそ下記のような合格率となっています。
試験内容 | 合格率 |
---|---|
1次試験 | 20〜40% |
2次筆記試験 | 20% |
2次口述試験 | ほぼ100% |
全体合格率 | 4〜8% |
続いて、各試験に分けて合格率の推移を詳しく見てみましょう。
1次試験の合格率について
1次試験について概要を説明します。
<1次試験の概要>
【試験形式】マークシート方式による択一式試験
【試験会場】札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・那覇の 8地区
【試験科目】
日程 | 試験科目 | 配点 | 試験時間 |
---|---|---|---|
1日目 | 経済学・経済政策 | 100点 | 9:50~10:50(60分) |
財務・会計 | 100点 | 11:30~12:30(60分) | |
企業経営理論 | 100点 | 13:30~15:00(90分) | |
運営管理 ( オペレーション・マネジメント ) | 100点 | 15:40~17:10(90分) | |
2日目 | 経営法務 | 100点 | 9:50~10:50(60分) |
経営情報システム | 100点 | 11:30~12:30(60分) | |
中小企業経営・中小企業政策 | 100点 | 13:30~15:00(90分) |
【科目合格・免除制度】特定資格の保有者や前年に当該科目の60点を超えた場合に科目合格が認められ、翌年はその科目の受験を免除することが可能(当該科目は60点として計算される。また科目合格は受験年を含め3年間有効。)
【合格基準】1次試験の総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないこと
【目安勉強時間】800時間
続いて、合格者数を見てみましょう。

受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 14,981 | 3,519 | 23.5 |
H25 | 14,252 | 3,049 | 21.4 |
H26 | 13,805 | 3,207 | 23.2 |
H27 | 13,186 | 3,426 | 26.0 |
H28 | 13,605 | 2,404 | 17.7 |
H29 | 14,343 | 3,106 | 21.7 |
H30 | 13,773 | 3,236 | 23.5 |
R1 | 14,691 | 4,444 | 30.2 |
R2 | 11,785 | 5,005 | 42.5 |
R3 | 16,057 | 5,839 | 36.4 |
R4 | 17,345 | 5,019 | 28.9 |
このように、最近の中小企業診断士人気と合わせて、R2年のコロナ禍で受験を見送った受験生がR3〜4年に受験している流れが見られ、受験生の増加しています。
副業推進や、会社に属しながらもスキルアップをするという流れが高まっているため、今後も継続して受験者数は増加していくと予想されます。
ただ、合格率に関してはR2年に40%を超える合格率となりましたが、R3年・R4年は連続して合格率が下がっています。
1次試験においても、過去と同様のおおよそ20%程度となるような難易度に設定されると予想されます。
- 1次試験の合格率は20〜40%で上下があるが、おおよそ20%になるような難易度
- 受験者数は過去最高を更新しており、今後も増えると予想
1次試験の科目毎の難易度
では1次試験の各科目の難易度はどの程度なのか?について解説していきます。
なお、難易度は合格率・勉強必要量・2次試験の関連性を考慮し、星3つを使ってわかりやすく説明します。
【難易度】
★☆☆:低い
★★☆:普通
★★★:高い
経済学・経済政策(難易度:★★☆)
【出題範囲】マクロ経済学とミクロ経済学
・マクロ経済:日本全体のレベル
・ミクロ経済:1企業にフォーカスを当てたレベル
【2次試験との関連性】なし
大学時代に経済学を学んでいた人は得点源になるでしょう。また計算や図を解釈する問題が多数あります。
続いて合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 14,852 | 2,689 | 18.1 |
H25 | 12,100 | 258 | 2.1 |
H26 | 13,398 | 2,601 | 19.4 |
H27 | 11,956 | 1,852 | 15.5 |
H28 | 12,266 | 3,636 | 29.6 |
H29 | 11,770 | 2,756 | 23.4 |
H30 | 11,548 | 3,048 | 26.4 |
R1 | 12,564 | 3,241 | 25.8 |
R2 | 9,849 | 2,311 | 23.5 |
R3 | 14,373 | 3,026 | 21.1 |
H25年は2.1%の合格率となっており、この年だけ超難化していると言えます。
その他の年はおおよそ20〜30%で安定しており、今後も安定した難易度と予想されます。
2次試験でこの科目の知識を使いませんが、大きく難易度が変化する科目ではないので、得点源として狙える科目でしょう。
財務・会計(難易度:★★★)
【出題範囲】財務と会計(制度会計と管理会計に分かれる)
・財務:企業価値や投資するかどうかを決定したりする意思決定会計等
・制度会計:社外に向けた会計(財務諸表等)
・管理会計:社内に向けた会計(セグメント毎の売り上げ等)
【2次試験との関連性】事例Ⅳ
計算がメインの科目です。簿記の2級と3級の間くらいの難易度と言われています。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 14,213 | 534 | 3.8 |
H25 | 14,343 | 2,374 | 16.6 |
H26 | 12,784 | 784 | 6.1 |
H27 | 12,649 | 4,666 | 36.9 |
H28 | 10,753 | 2,320 | 21.6 |
H29 | 11,573 | 2,969 | 25.7 |
H30 | 12,033 | 876 | 7.3 |
R1 | 14,157 | 2,310 | 16.3 |
R2 | 10,738 | 1,161 | 10.8 |
R3 | 15,386 | 3,446 | 22.4 |
計算がある科目なので、年度毎の難易度に大きなばらつきがみられる科目です。
試験時間は60分という設定ですが、25問ある&計算が必要なので、他の科目と比べて時間が足りなくなる科目です。
25問の中でも時間がかかる問題と、知識で解ける問題があるので、解ける問題を積極的に取り組むタイムマネジメントが重要です。
財務会計は簿記の知識がある方や、計算問題が得意な方にとっては得点源になりうる科目です。
また2次試験の事例Ⅳでメインとなる科目であり、2次試験で差がつきやすい科目になるので、必ず抑えておきたい科目です。
企業経営理論(難易度:★★★)
【出題範囲】企業戦略論・組織論・マーケティング論
【2次試験との関連性】事例Ⅰ・Ⅱ
中小企業診断士試験の核となる科目です。主に2次試験で事例Ⅰ・Ⅱとの関連性が深いですが、全てに共通する考え方は企業経営理論で学びます。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 13,926 | 1,741 | 12.5 |
H25 | 13,711 | 935 | 6.8 |
H26 | 13,796 | 1,948 | 14.1 |
H27 | 12,628 | 2,105 | 16.7 |
H28 | 12,659 | 3,746 | 29.6 |
H29 | 12,108 | 1,091 | 9.0 |
H30 | 13,037 | 927 | 7.1 |
R1 | 15,026 | 1,625 | 10.8 |
R2 | 11,462 | 2,226 | 19.4 |
R3 | 15,117 | 5,253 | 34.7 |
R3年は易化していますが、合格率10%を切る年も多く、難易度の高い科目であると言えます。
実際に受験生の中では、「企業経営理論」は苦手科目として取り上げられることの多いです。
しかし、2次試験ではこの科目で学ぶ基本の考え方を活用して回答を組み立てていくため、しっかりと時間をかけて理解する必要があります。
ただし抽象度の高いため、得点源にはしにくい科目だと言えます。
運営管理(難易度:★★☆)
【出題範囲】生産管理・店舗販売管理
・生産管理:製造業のオペレーション
・店舗・販売管理:小売業のオペレーション
【2次試験との関連性】事例Ⅲ
製造業・小売業が中心の科目です。この業界で働いている方は多少有利です。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 13,565 | 2,630 | 19.4 |
H25 | 12,592 | 1,323 | 10.5 |
H26 | 12,838 | 2,288 | 17.8 |
H27 | 11,956 | 1,852 | 15.5 |
H28 | 11,865 | 1,395 | 11.8 |
H29 | 13,207 | 410 | 3.1 |
H30 | 11,548 | 3,048 | 26.4 |
R1 | 12,795 | 2,921 | 22.8 |
R2 | 9,745 | 912 | 9.4 |
R3 | 15,118 | 2,796 | 18.5 |
H29年やR2年のように、大きく難化している年はありますが、逆に30%を超えるような易化もない教科です。
理由は、教科の分量の多さと計算が含まれる点です。試験時間も90分で40問以上回答する必要があり、その中には計算問題も含まれます。
筆者も、受験生時代に序盤の計算問題で大きく時間のロスをしてしまい、焦ったことを鮮明に覚えています。
ただし、勉強するもの自体はイメージしやすいものも多く、理解はしやすいことから難易度は★2としました。得点源にもなりうる科目でしょう。
また、運営管理は2次試験の事例Ⅲと関連性がありますが、2次試験勉強に入って復習するレベルでも十分間に合う知識量です。
経営法務(難易度:★★★)
【出題範囲】ビジネス関連の法律
・民法(経営を行う上での関連する法律)
・会社法(会社の種類や設立等の法律)
・知的財産権(特許権等について)
【2次試験との関連性】なし
暗記が主な教科です。語呂等を駆使して、用語を確実に定着することが合格には必要です。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 12,936 | 3,519 | 18.1 |
H25 | 12,585 | 3,094 | 21.1 |
H26 | 12,153 | 3,207 | 10.4 |
H27 | 12,454 | 3,426 | 11.4 |
H28 | 13,259 | 839 | 6.3 |
H29 | 14,269 | 1,192 | 8.4 |
H30 | 13,854 | 713 | 5.1 |
R1 | 15,075 | 1,530 | 10.1 |
R2 | 11,568 | 1,390 | 12.0 |
R3 | 15,683 | 2,013 | 12.8 |
経営法務は合格率から見ても、筆者自身の経験からも、1次試験の中で最も難しい科目と言えます。
試験には見たことがない問題がほぼ必ず出ますので、他の科目のように実直に知識を積み上げていっても、本番で高難易度の問題がたくさん出てしまうと合格点まで達さない可能性もあります。
難易度が高い年度に受験した場合は、確実な問題で得点を重ねて足切りを回避しつつ、他の科目で補って、全体として合格を目指すのがベターです。
従って、弁護士や司法書士のような法律に詳しい方以外は得点源にするのは難しいです。
なお、幸いにも経営法務は2次試験との関連性はありません。
経営情報システム(難易度:★☆☆)
【出題範囲】情報技術に関する領域・情報システムに関する領域
・情報技術に関して:ハードやソフト、ネットワークに関する知識
・情報システムに関して:IT化の進め方やセキュリティに関する知識
【2次試験との関連性】事例Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(わずかな関連性)
暗記が主な教科です。情報系に知見がある方は、得点源にすることが可能です。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 11,145 | 2,880 | 25.8 |
H25 | 11,623 | 6,021 | 51.8 |
H26 | 10,031 | 1,502 | 15.0 |
H27 | 11,172 | 716 | 6.4 |
H28 | 13,385 | 1,143 | 8.5 |
H29 | 13,725 | 3,646 | 26.6 |
H30 | 11,498 | 2,628 | 22.9 |
R1 | 12,285 | 3,271 | 26.6 |
R2 | 9,985 | 2,868 | 28.7 |
R3 | 13,695 | 1,457 | 10.6 |
この科目は合格率が低い年もありますが、基本的に難しい問題はそれほどなく、暗記をしっかりしていれば合格ラインに達することが可能です。
IT系の業務をされている方はもちろん、始めて勉強されるされる方にとっても得点源としやすい科目と言えます。
また、2次試験事例Ⅰ〜Ⅲに関連性があるとしましたが、関連性の深さはそれほど深くありません。
中小企業経営・政策(難易度:★☆☆)
【出題範囲】中小企業経営・中小企業政策
・中小企業経営:中小企業の特性や実態に関する知識
・中小企業政策:国や地方自治体が行っている中小企業への施策に関する知識
【2次試験との関連性】なし
暗記が主な教科です。最新の情報を基に作問されるので、最新の教材を使うようにしましょう。
では合格率を見てみましょう。

科目受験者数(人) | 科目合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 14,088 | 2,455 | 17.4 |
H25 | 13,210 | 2,229 | 16.9 |
H26 | 12,283 | 3,826 | 31.1 |
H27 | 10,571 | 1,290 | 12.2 |
H28 | 12,283 | 1,539 | 12.5 |
H29 | 13,791 | 1,509 | 10.9 |
H30 | 13,449 | 3,090 | 23.0 |
R1 | 13,229 | 737 | 5.6 |
R2 | 11,614 | 1,905 | 16.4 |
R3 | 15,446 | 1,093 | 7.1 |
年度によっては10%を切る年度もあるものの、全体として安定して20%程度の合格率を出している科目です。
出題内容は基本的に統計の結果・既存の制度について問う問題が中心となるので、ひねった問題は多くなく、得点源にしやすいと言えます。
2次試験の関連性は無いものの、この科目で学ぶ補助金をはじめとした様々な制度については合格後の現場実務で、最も有用な知識となるでしょう。
2次試験の合格率について
続いて2次試験について概要を説明します。
<2次試験の概要>
【受験資格】筆記試験:1次試験合格者
口述試験:2次筆記試験合格者
【試験形式】筆記試験:各設問15~200文字程度の記述式
口述試験:口述試験 10分程度の面接
【試験会場】札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7地区
【試験科目】
試験 | 試験科目 | 配点 | 試験時間 |
---|---|---|---|
筆記試験 | 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 I | 100点 | 9:40~11:00(80分) |
中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 II | 100点 | 11:40~13:00(80分) | |
中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 III | 100点 | 14:00~15:20(80分) | |
中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 IV | 100点 | 16:00~17:20(80分) | |
口述試験 | 筆記試験科目問題から、ランダムで出題 | – | 個別指定(約10分) |
【合格基準】2次筆記試験における総点数の60%以上でかつ1科目でも40%未満のものがないこと
【合格率】筆記試験は例年、おおよそ20%
口述試験は例年、ほぼ100%(基本的な会話ができれば合格レベル)
続いて、合格者数を見てみましょう。

受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
---|---|---|---|
H24 | 4,878 | 1,220 | 25.0 |
H25 | 4,907 | 910 | 18.5 |
H26 | 4,885 | 1,185 | 24.3 |
H27 | 4,941 | 944 | 19.1 |
H28 | 4,394 | 842 | 19.2 |
H29 | 4,279 | 828 | 19.4 |
H30 | 4,812 | 905 | 18.8 |
R1 | 5,954 | 1,088 | 18.3 |
R2 | 6,388 | 1,174 | 18.4 |
R3 | 8,757 | 1,600 | 18.3 |
R3年は1次試験の合格者増加に加えて、コロナ禍の特例措置で1次試験合格権利を延長した方がたくさん受験した結果、受験者数および合格者数が急増しています。
しかし、合格率は約20%で安定的に推移しており、受験者が今後はさらに増えていくと予想されます。
2次筆記試験は、採点基準や模範回答が公表されておらず、相対評価であると考えられているため、今後も合格率は一定ですが、受験者増えることで競争率は高まっていくと考えられます。
なお、2次筆記試験を突破すると2次口述試験がありますが、こちらは10分程度2人の試験官と2次筆記試験の事例について質問をされる試験です。
特段おかしなことをしなければ基本的に合格します。
- 受験者数・合格者数は急増している
- 合格率はこのまま20%程度で保たれると考えられるため、競争率が高まると予想
2次試験の科目毎の難易度
2次試験筆記試験の科目毎の難易度ですが、2次筆記試験には科目合格制度がないため、公式な科目毎の合格率が出ていません。
また筆者の経験や周囲の人を見ていても、2次試験の事例Ⅰ〜Ⅲに関しての難易度の差はそれほどなく、得意不得意は人によるという回答になります。
事例Ⅳ(財務・会計)に関しては、近年難易度が上がっており、おそらく得点調整が大幅に入っています。
逆に言うと、事例Ⅳは難易度が高いですが、得意にしてしっかり得点を稼ぐことで、他受験生との得点差をつけることができるので、大きく合格に近づくことができます。
中小企業診断士試験に合格するための勉強時間や期間とは?
単純に合格率だけを見ても難易度は分かりません。
そこで合格率に加えて、合格に必要な勉強時間や平均勉強期間を見ることで、実情に沿った難易度がわかります。
勉強時間について
中小企業診断士の勉強時間は約1,000時間と言われています。
これは各科目のベース知識がない場合での勉強時間で、実際に筆者も1次2次合わせて、約1,000時間の勉強時間をかけて合格しました。
このうち、1次試験と2次試験に関する勉強時間は、1次試験が約800時間、2次試験が約200時間です。
さらに、1次・2次の科目別の勉強時間をまとめます。
試験 | 科目 | 目安勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|
1次試験 (約800時間) | 経済学・経済政策 | 120時間 | ★★☆ |
財務・会計 | 140時間 | ★★★ | |
企業経営理論 | 140時間 | ★★★ | |
運営管理 | 120時間 | ★★☆ | |
経営法務 | 100時間 | ★★★ | |
経営情報システム | 100時間 | ★☆☆ | |
中小企業経営・政策 | 80時間 | ★☆☆ |
1次試験では分量に応じた目安勉強時間と合わせて、2次試験との関連性を鑑みて勉強時間を配分しなければいけません。
また論理的な思考を身につけて回答する科目と暗記科目があり、論理的思考が必要な科目は比較的勉強時間がかかります。
続いて2次試験の目安勉強時間です。
試験 | 科目 | 目安勉強時間 | 難易度 |
---|---|---|---|
2次筆記試験 (約200時間) | 事例Ⅰ | 40時間 | – |
事例Ⅱ | 40時間 | – | |
事例Ⅲ | 40時間 | – | |
事例Ⅳ | 80時間 | – | |
2次口述試験 | 事例企業からランダム | 10時間程度 | ほぼ100%合格 |
2次試験は1次試験に比べて勉強時間が短いと思ったかもしれませんが、ストレート合格を狙う場合は、1次試験〜2次試験の期間が約3ヶ月弱しかないので、その間に効率的な学習を進める必要があります。
また2次試験筆記は後述で詳しく説明しますが、模範回答がない科目で不安を非常に感じますが、筆者の経験からすると、ある一定の勉強時間で急に得点を伸びる感覚があります。
しかし、それ以上は勉強時間を増やしても、得点の伸びと勉強時間の相関が薄れていくと思っています。
ただし、事例Ⅳ(財務・会計)については数値計算になるので、時間をかけて会計知識や計算の精度を上げることで、確実に得点UPに繋げることができますので、受験生の多くは、事例Ⅳに他事例よりも時間をかけて、得点源にして合格を目指す形が最も多いです。

勉強期間について
中小企業診断士はおおよそ1年間勉強して、ストレート合格(1次2次とも1回で合格)を狙う人が多いです。
資格の学校等の講座は10月〜翌年1月を目処に開講します。
例えば、12月から勉強を始めたとすると、1次試験は8月初旬なので、約8ヶ月程度の勉強期間となります。
2次筆記試験は、その3ヶ月弱の期間になるので、こちらもやはり3時間程度の勉強時間は必要です。
この場合の毎日のスケジュールを考えてみると、以下のようになります。

意外と通勤時間や昼休みの時間を使えば3時間を確保することはできます。
ただ、これを継続して1年間やり続けるのは簡単ではありません。
モチベーションの維持するために、オススメは周囲の人を巻き込んで、強制的に勉強する環境を作り上げることです。
平均受験回数について
中小企業診断士の1次2次合算の合格率は4〜8%と低く、複数年に渡って受験にトライする方も多いです。
従って、平均受験回数を見てみることで、試験の難易度も見えてきます。

大手資格スクールLECの調査によると、学習期間が1年以内の割合は27%であり、2〜3年の学習期間の方は約40%います。
更に4年以上という方も15%おり、幅広い知識と論理的思考力を求められる中小企業診断士の難易度を物語っています。
合格者の勤務先について
1,000時間程度の勉強時間が必要な中小企業診断士を受験する人はどんな人が多いのでしょうか?下記に、データをまとめました。(出典:中小企業診断協会)

ビジネスマン向けの資格だけあって、民間企業に勤める方が全体の65%と最も高い割合となりました。
つまり、中小企業診断士は働きながら取得できる資格と言えるでしょう。その後のキャリアアップに繋げる方もいれば、資格を活用して独立をする方も多いと言えます。
中小企業診断士試験はなぜ難しい?
合格率4〜8%、勉強時間1,000時間、複数年受験される方も多いことから中小企業診断士の合格難易度がなんとなく感じていただけたと思います。
なぜこれほど中小企業診断士の試験は難しいのでしょうか?
ここでは、その理由について解説します。
単純な暗記だけの試験ではないため
科目毎の難易度の箇所でも紹介しましたが、試験では単純な暗記だけでなく、論理的思考力も求められます。
単純な暗記だけであれば、時間をかければなんとか合格できるかもしれませんが、論理的思考力は時間をかければかけるほど身に付くわけではなく、そういった点が中小企業診断士試験の難易度を上げていると言えます。
科目・求められる能力が多岐に渡るため
試験は1次試験が7科目あり、それほど深い知識は求められませんが、幅広い知識が必要です。
従って、どの教科を重点的にやるべきか、逆に不得意な単元をどう切っていくかのように効率的に勉強をしなければいけません。
また2次試験は筆記形式になりますが、80分の中で事例企業の状況を把握し、施策提案までしなければいけません。
この80分で合格ラインに達するには、速読力や書く力、タイムマネジメント力などが求められるという点が、難易度を上げている要因です。
2次試験の模範解答がないため
2次試験には公式な模範回答が出ていません。
一応、各資格の学校から回答が出ていますが、80分でかけるレベルのものは正直少ないです(回答レベルが高すぎる)。
従って、受験生の多くは「ふぞろいな合格答案」と呼ばれる実際に合格した再現答案を集めた参考書を基に、自身の回答レベルを上げています。
しかし、この参考書も統計データとして、どのキーワードを入れている答案の点数が高いのかということを提示しているのみで、やはり模範回答がわかるわけではありません。
受験生の中にはどこを目指せば良いか分からず、迷子になる方も多いです。
2次試験は相対評価であるため
2次試験の合格基準は、「総得点の60%以上かつ各科目で40%以上の得点である」とありますが、模範回答が公表されていないのと同様、採点基準の公表はされていません。
なぜなら、筆記試験は回答の自由度は高く、杓子定規に採点することが難しいからです。
つまりこのキーワードが入っていたら○点のような採点ではなく、論理的な説明力や文章力など総合的に判断した採点であると考えられます。
従って、1次試験は年によって合格率が上下しますが、2次試験は合格率約20%を維持しています。
総合的な採点にして、相対的な評価で最終的な合否を決めていると予想でき、このことが難易度を上げていると言える点です。
養成課程:2次試験を受験しないという方法もある
実は中小企業診断士は2次試験を受験せずに資格を取得できる「養成課程」という制度があります。
1次試験合格の必要はありますが、その後中小企業大学校や千葉商科大学のような機関で、半年〜2年程度に渡って演習と実習をすることで、中小企業診断士になることができます。
多くの場合は平日を含む日程でカリキュラムが組まれていますが、一部機関では社会人でも受講可能なように、平日の夜と土日しか演習・実習がないところもあるので、働きながら資格の取得を狙うことが可能です。
中小企業診断士試験では2次試験が多くの受験生の壁となっているので、費用が安くても200万円程度かかるものの、確実に中小企業診断士になれる養成課程に進む選択肢も考慮しても良いでしょう。
【入学要件】1次試験合格かつ書面・面接試験の合格
【費用】約200万円〜300万円
【期間】半年〜2年間
【講義日時】学校による。夜間や土日中心の学校もあり。
【実施場所】中小企業大学校をはじめ、特定の大学や法人
【講義内容】演習と実習
中小企業診断士と他の資格との難易度比較
ここからは他の資格と比較してみることで、中小企業診断士の難易度について紹介していきます。
各資格と中小企業診断士の比較に入る前に、全体の偏差値の比較をしておきましょう。
社会保険労務士(社労士)
<社会保険労務士(社労士)の概要>
- 業務内容:社会保険や労働関連の申請代行や労務管理
- 受験資格:あり
- 試験科目数:大小含めて10科目
- 試験形式:マーク式
- 勉強時間:1,000時間
- 合格率:6〜7%
- 毎年の合格者数:2~3,000人
- 偏差値:65(難関)
- 独占業務:あり
社労士は労務関係のプロとして、企業のサポートをする士業です。
試験の内容としては、基本的に暗記が中心で、中小企業診断士試験で求められる論理的思考力はそれほど重要視されていません。
しかし、社労士の試験は狭く深く問われるので、細かい要素や数値まで暗記する必要があり、暗記が苦手な方は中小企業診断士よりも難しいと感じることもあるでしょう。
独占業務もありますが、社労士の中で高い年収の方の多くは、人事労務管理のコンサルティングを請け負っています。
会社によって異なる状況に対して適切なアドバイスが必要とされるため、コンサルティングまで手を広げようと思うと試験にはない論理的思考力が必要となります。
中小企業診断士の方が若干難しい
行政書士
<行政書士の概要>
- 業務内容:官公署に提出する書類の作成と手続きの代行
- 受験資格:なし
- 試験科目数:8科目
- 試験形式:マーク式+記述式
- 勉強時間:500〜800時間
- 合格率:8〜13%
- 毎年の合格者数:4~6,000人
- 偏差値:62(難関)
- 独占業務:あり
行政書士は官公署に向けた書類を作成・申請代行をする士業で、独占業務もある人気の高い資格です。
試験内容は社労士と同様に、暗記が中心です。
許認可に関わる書類の提出手続きを代行する士業のため、法律についての出題が約8割程度を占め、一般知識についての出題が残りの2割を占めています。
難易度は勉強時間や合格率を比較しても中小企業診断士より行政書士の方が合格しやすいと言えます。
中小企業診断士の方が難しい
税理士
<税理士の概要>
- 業務内容:税務代理、税務書類の作成、税務相談
- 受験資格:あり
- 試験科目数:11科目の中から5科目
- 試験形式:記述式
- 勉強時間:3,000時間
- 合格率:15〜20%
- 毎年の合格者数:5~6,000人
- 偏差値:75(超難関)
- 独占業務:あり
国家資格として認知度が高い税理士ですが、その難易度は非常に高いと言えます。
税理士の試験内容は条文の暗記もありますが、会計についての知識を学ぶ必要もあるため、暗記と論理的な思考の両方が必要となります。
また試験科目は11科目の中から5科目を選択する形式で、それぞれの分野の難易度が高いので、合格した科目毎に専門家として評価されます。
合格までの勉強時間は3,000時間とされており、仕事をしながら勉強するとうまくいっても約3年程度はかかるでしょう。
税理士の方が難しい
宅地建物取引士(宅建士)
<宅地建物取引士(宅建士)の概要>
- 業務内容:宅地取引の公正な取引のサポート
- 受験資格:なし
- 試験科目数:4科目
- 試験形式:マーク式
- 勉強時間:2〜300時間
- 合格率:15〜18%
- 毎年の合格者数:3〜4万人
- 偏差値:57(普通)
- 独占業務:あり
宅建士は不動産取引のプロとして、不動産会社等で活躍する資格です。
試験内容は不動産に関する知識を問われる試験で、勉強時間・合格率・偏差値から見ても中小企業診断士と比べて難易度は低いと言えます。
中小企業診断士の方が難しい
弁理士
<弁理士の概要>
- 業務内容:特許権を代表とする知的財産権に関わる業務
- 受験資格:なし
- 試験科目数:4科目
- 試験形式:短答式+論文式+口述試験
- 勉強時間:3,000時間
- 合格率:6〜8%
- 毎年の合格者数:200人程度
- 偏差値:75(超難関)
- 独占業務:あり
弁理士は特許をはじめとした知的財産権の専門家です。
試験内容は短答式・論文式・口述試験があり、3段階で実施されます。
各試験の合計合格率が6〜8%となっており、勉強時間を考慮しても非常に難易度の高い試験になっています。
更に合格者数も200人程度と、他の資格と比較しても1〜2桁程度合格者が少ないことがわかります。
しかし、大手資格の学校のLECによると、意外にも企業に勤める合格者の割合が約49%程度あり、効率的な勉強をすることで、働きながら合格を目指せる資格になっています。
弁理士の方が難しい
中小企業診断士試験は必要な要件もなく、学力も関係ない
中小企業診断士の難易度を見てきましたが、極論を言うと試験受験には大学等の卒業要件もないですし、受験は何度行なっても問題はありません。
従って、諦めさえしなければ必ず受かる試験になります。
実際、筆者の周囲の診断士の方の中には高卒でも見事に合格されている方や10年間受験を続けて合格を勝ち取った方もいます。
本記事では偏差値評価を記載していますが、あくまでそれは目安であって、難関だからと言う意識は無くしましょう。
大学の偏差値に換算すると・・・というものはほとんど当てにならず、一番大事なのは本気で受験するかどうかだけです。
ぜひ興味がある方は受験を検討してみてください。
中小企業診断士試験に合格するには?
中小企業診断士試験ではどのような対策を取れば、合格することができるのでしょうか?
ここでは、合格するための要素について説明します。
<中小企業診断士試験に合格するための要素>
- 効率的な勉強
- 長期的なモチベーション維持
- 適切なスケジューリング
効率的な勉強
企業に勤める方に人気な中小企業診断士資格なので、仕事をしながら勉強をする方が大半かと思います。
また試験は幅広い知識を求められるので、出題傾向を捉えた効率的な勉強が必須になります。
長期的なモチベーション維持
試験勉強はおおよそ1年間続くため、長期間にわたるモチベーションの維持が必要となります。
筆者自身、合格まで何とかやり遂げることができましたが、その要因として最後まで諦めなかったという点に尽きると思っています。
ご自身から周囲の方へ受験することを言ってみたり、勉強仲間を見つけてみるなど、モチベーションを維持できる環境を整えましょう。
適切なスケジューリング
どの科目から勉強すべきか、どのタイミングでどれくらい終わっていなければいけないかなど、スケジューリングは試験勉強において非常に重要です。
闇雲に1科目ずつ勉強していては効率が悪く、気づいた時にはもう間に合わないこともあります。
なかなかご自身でスケジュールを0から組むのは難しいので、講座を受講したり、よく調べた上でスケジュールを引くことが必要です。
おすすめはオンライン講座
筆者のおすすめはオンライン講座で合格を目指すことです。
オンライン講座は動画で講義を受講できるため時間にとらわれず、質の高い講義を受けることができます。
また通学講座に比べて費用が安く、合格祝い金を考慮すると実は独学よりも低コストで勉強をすることができます。
最近ではオンライン講座の課題でもあるモチベーションの維持を解決できるような提案をしている講座もあります。
下記の記事でオンライン講座についてまとめていますので、ぜひこちらもご覧ください。

まとめ
いかがでしたでしょうか?
中小企業診断士の試験難易度は資格全体として難関資格と言われており、難しい部類になります。
しかし、学力はそれほど重要ではなく、本気で合格を目指すかどうかが重要です。
また民間企業の会社員が合格者の約7割を占めており、効率的な受験が合格の鍵となりますので、ぜひチャレンジしてみてください!