中小企業診断士って稼げない資格と聞くけど本当はどうなの?独立しても問題なくやっていけるの?こんなお悩みありませんか?
筆者自身も中小企業診断士の資格を取得するまでは、本当に稼げるの?と半信半疑で受験勉強をしていました。
将来的に独立を目指して勉強して、資格を取得したのに、結局稼げずに独立できなかったり、年収が結果的に下がってしまうことは避けたいですよね?
逆に、実際は稼げるのに世間の声に流されて、中小企業診断士は稼げないから資格の取得を諦めようと言って可能性を狭めたくもないですよね?
そこで本記事では中小企業診断士の年収について詳しく解説していきます。
筆者は会社員時代の2021年に資格登録した現役の中小企業診断士です。
現在は独立していますが、会社員時代に副業でも稼いでいた経験がありますので、それらの経験を踏まえて解説していきます。
【この記事で解決できるお悩み】
・中小企業診断士の年収はいくら?
・中小企業診断士って独立できるの?
・将来的に中小企業診断士って食べていけるの?
中小企業診断士の年収の実態は?
中小企業診断士の年収について独立開業している場合と、企業内診断士の場合の年収を解説していきます。
独立開業している診断士の年収
中小企業診断協会が中小企業診断士の年収の実態について、100日以上コンサルタント業務を行っている診断士(独立と考えられる)方についての平均年収のデータを提供しています。
年収レンジ | 中小企業診断士における割合(%) | 民間企業における割合(%) |
---|---|---|
100万円以下 | 9.36 | 8.43 |
101~200万円 | 7.54 | 13.78 |
201~300万円 | 8.12 | 15.52 |
301~400万円 | 7.46 | 17.41 |
401~500万円 | 8.29 | 14.57 |
501~800万円 | 19.55 | 21.11 |
801~1,000万円 | 13.34 | 4.59 |
1,001~1,500万円 | 14.66 | 3.34 |
1,501~2,000万円 | 6.05 | 0.73 |
2,001~2,500万円 | 2.07 | 0.25 |
2,501~3,000万円 | 1.49 | NA |
3,001万円以上 | 2.07 | NA |
最も大きなボリュームゾーンは501〜800万円で民間企業のボリュームゾーンと変わりませんが、注目したいのは1,001〜1,500万円です。
民間企業に勤める会社員で1,000万円を超える給料をもらう割合は全体の3.3%である一方、中小企業診断士で1,000万円の年収を超えている割合は14.7%と非常に高い割合であることがわかります。
しっかりと診断士として活動されている方は高い年収を上げていると言えますね。
企業内診断士の年収
企業内で働きながら診断士活動をやっている場合は、副業での稼ぎ方になります。
副業で働く場合は、全くの収入0もいれば、年間数百万単位で稼ぐ人もいます。
ただ、やはり稼動時間は本業がメインで、診断士業務は平日の終業後もしくは土日祝日しかありません。
従って、平日1時間、週末は半日だけくらいのそれほど負荷がない稼働であれば、10万円/月程度の収入が現実的かと思います。(ただし、最初の頃は慣れもあるため、もっと時間をかける必要はある)
一方で、スポット的な大きめの補助金を担当すれば、採択された際に成功報酬が数百万円になります。
筆者の周りで事業再構築補助金やものづくり補助金を積極的にやっている企業内診断士の中には、副業だけで6〜700万円程度を年間で稼ぐ人いました。ただ、補助金は国の制度が変われば収入も大きく変動するため、安定収入と考えない方が良いでしょう。
従って、おおよそ会社員の年収+120万円/年くらいが、それほど負荷なく副業をしている企業内診断士の年収となります。
なお、筆者自身も、会社員時代に中小企業診断士として副業をした経験がありますので、こちらの記事も参考にしてみてください。

中小企業診断士の具体的な仕事とは?
ここでは、平均1,000万円を稼ぐ人も多くいる中小企業診断士がどんな仕事をしているのかを紹介します。
まずは参考程度ですが、中小企業診断協会のHPに掲載されている情報をまとめると、以下のような回答が得られています。
平均報酬(平均) | 最高報酬(平均) | 構成比(%) | |
経営指導 | 97千円/日 | 141千円/日 | 29.78 |
講演・教育訓練 | 130千円/日 | 191千円/日 | 24.33 |
診断業務 | 108千円/日 | 207千円/日 | 22.01 |
原稿執筆 | 5千円/枚(400字) | 6千円/枚(400字) | 12.11 |
調査・研究 | 49千円/日 | 87千円/日 | 11.78 |
現場実務を行なっている筆者からすると、上記の回答はある程度上振れしており、現実的には×0.8くらいが”全体の平均”になると思います。
業務内容を更に具体的に解説すると、以下のような仕事になるでしょう。
中小企業診断士の具体的な仕事
- コンサルティング業(経営指導)
- 補助金申請業務(経営指導、診断業務)
- 公的な機関で中小企業を支援(経営指導、診断業務、調査・研究)
- 執筆活動(原稿執筆)
- 研修・セミナー講師(講演・教育訓練)
- 資格の学校の講師(講演・教育訓練)
①コンサルティング業
中小企業診断士は国内唯一のコンサルティングの国家資格であるため、コンサルティング業は中小企業診断士の業務としては中核を担います。
戦略立案からマーケティング、資金調達など、中小企業経営者のブレーンとして様々な提言を行う業務となります。
基本的には長期目線での支援となるので、コンサルティング業で支援するとなると、顧問契約となるでしょう。
②補助金申請業務
補助金申請業務は、国などから公募される補助金に申請する際に、事業計画書を作成する必要があるため、その計画書を作成することが中心となります。
事業計画書の内容は、補助金によって要求される内容は細かくは異なりますが、おおまかな構成は「既存事業について」「新規事業について」「売上数値計画について」です。
つまり現状を分析して、そこから考えられる強みや機会を活用して、新規事業を行い、その結果どのような効果が得られるかを考えるのが補助金の支援業務になります。
試験を把握されている方はなんとなくわかったかもしれませんが、これは2次筆記試験で求められる能力なので、診断士になって最初の業務として取り組む方も多いです。
報酬はおおよそ補助金額の10%になります。
③公的機関で中小企業を支援
公的機関は、国や地方自治体の行政機関や商工会議所・商工会などが該当し、その中でも「窓口相談」や「専門家派遣」といったものがあります。
実際の業務内容は多岐に渡り、経営者が様々な相談に来るので、それに対応する業務となります。
公的機関の支援は、一般的に民間の支援と比べて報酬は低いと言われますが、社会的には非常に重要な業務であるため、仕事はなくなることはありません。
また働き方は週に数日、フルタイムで窓口や専門家派遣として企業に訪れることになるので、独立した後でも多少会社員勤めの要素がある形になります。
逆に言えば、安定した収入を確保できるので、独立した際には公的機関でまずは仕事をしっかり獲得しながら実績を積み上げることを目指すのも良いでしょう。
④執筆活動
執筆活動は、取材から現場対応、書き起こしまで様々な業務が包括される仕事となります。
中小企業診断士は話したり、書くだけでなく、人から話を聞き出す能力も求められるということですね。
またテキスト作成や特定の業務に関する自身の知識や経験を執筆する場合もあります。その場合は、単純にライティング力が求められます。
筆者も執筆活動の経験がありますが、やはり自身が執筆した書籍が販売されている現場を見ると、これまでできなかった経験で非常に嬉しい思いとなりました。
⑤研修・セミナー講師
話す仕事として、研修やセミナー講師として登壇することもあります。
内容は創業支援や補助金について、その他専門性が高いものについてなど、公演内容は多岐に渡ります。
民間企業の講師として登壇する機会は中々ないかもしれませんが、商工会議所等の公的機関での登壇機会もあるので、そういった場で実績を作っていくこともできるでしょう。
前述の表の最高報酬には記載がありませんでしたが、人気講師になれば、1公演で数十万円になることもあります。
⑥資格の学校の講師
資格の学校に通っている場合は、講師になるチャンスもあります。
実際、筆者が通っていたTACでは、試験合格後に講師になりませんか?という案内をもらいました。
業務自体は、学校の先生と同様に、講義の準備と講義の実施、質問対応が主になります。
また講師と言っても、常駐の講師になるわけではなく、1コマ毎に講義をやる形となるため、他の診断士業務をやりつつ、講義の時だけ登壇するといった形が通常です。
ただ、各学校が講師を求めるタイミングもあるので、どうしてもやりたいということであれば、別の学校に直接募集がないか問い合わせてみることをオススメします。
中小企業診断士の年収はなぜ高いの?
ここまで中小企業診断士の平均年収とその業務内容を紹介してきましたが、なぜ民間企業の方と比較して年収が高いのかを解説していきます。
独占業務がない分、報酬は自由
中小企業診断士には、税理士の税務の代理業務や社労士の保険に関する申請代行のような独占業務はなく、それが理由で稼げないと言われることが多いです。
しかし、逆に独占業務はある程度マニュアル化されている側面もあるため、価格競争に陥りやすく、報酬が低くなりがちです。
一方、中小企業診断士の業務は他の診断士と比較されることは少なく、しっかりと実績を残していけば、報酬は比較的自由に提示することが可能です。
そのため、人気な診断士はセミナー単価が高くなったり、コンサル料も高くしてくことができ、高収入に繋がっています。
専門性と掛け合わせて稼ぐことができる
中小企業診断士資格を単体で活用して稼ぐ方も多いですが、独立される場合の多くは、それまで企業内で培ってきた専門性と中小企業診断士の資格を掛け合わせて活躍される方が多いです。
その方がより他の診断士やコンサルタントとの差別化ができるため、企業から重宝されます。
つまり、企業内で働きながら士業としても業務を行う割合が多い中小企業診断士は、他の士業に比べて専門性を高めやすく、その分報酬も高くなっている言えます。
他の資格との兼業で稼ぐ人も多い
前述では、企業内で培った専門性×中小企業診断士資格で稼ぐパターンを紹介しましたが、他の士業資格×中小企業診断士資格で稼ぐパターンも多いです。
他の士業との掛け合わせであれば、企業側もコストを抑えられ、士業側は報酬を増やすことができます。
他の士業の独占業務請け負い、それをフックに診断士業務で長期の顧客単価に繋げるという形で、年収UPさせることが可能です。
中小企業診断士で独立するには?
ここまで年収の話をしてきましたが、この記事を見ている方の多くは、将来的に独立をしたいと考えている方も多いのではないでしょうか?
実際に企業に所属しながら独立したいと考えている方は、全体の約3割程度はいます。
そこで、試験合格後に独立するためにはどのような準備をしておけば良いのかを解説します。
先輩診断士や中小企業の方等と繋がりを作っておく
先輩診断士と関係を作っておくことで、案件の紹介を受けやすくなります。
もしそういった方がいなくても、ご自身の地域の中小企業診断士協会への入会することでたくさんの診断士と知り合う機会ができますので、積極的な参加をお勧めします。
筆者の周囲の方も、協会への積極的な参加により案件の受注に繋げている方は大勢います。
また独立前から中小企業経営者との繋がりを作り、あらかじめ顧客契約を結んでおければベストです。さらにそこから新しい事業者を紹介してもらうことも可能です。
ただし、本業の顧客を引き抜くことは職務規定上問題がありますので、ご注意ください。
案件には積極的に手を挙げる
前述の先輩診断士からの紹介案件について、ご自身が出来なさそうという案件もあると思います。
ただ、最初の頃は積極的に背伸びした案件にも手を挙げることをオススメします。
基本的に独立診断士になると、会社勤めの時のように仕事が降ってくるということはまずないですから、ご自身で仕事を取りにいかなければいけません。
多少無理してでも案件獲得を狙うことで、否応なしに成長して案件獲得の幅が広がります。
実際、筆者自身は何のスキルも専門性もありませんでしたが、とにかく案件に手を上げることで仕事をいただけました。
顧問契約を目指す
中小企業診断士がやる支援内容の中には、補助金申請支援業務やスポットコンサルのような単発での仕事もたくさんあります。
しかし、継続的に稼ぐには顧問契約が重要になってきます。
中小企業診断協会によると、診断士業務をしている方の約5割は顧問契約を結んでおり、平均顧問先は約7社となっています。
実際に7社と顧問契約を結ぶのはなかなか大変ですが、独立をした際には2社程度の顧問契約で安定的な収益があると安心ですね。
ただ、顧問契約がないから独立できないかというとそんなことはなく、単発の仕事であっても常に顧問契約に繋がるような仕事の仕方を意識することが重要です。
中小企業診断士の将来性は?
近年、今ある国家資格のほとんどの業務がAIに代替されることが言われますが、中小企業診断士の将来性は今後どうなるのでしょうか?
2017年に日経新聞で紹介されていた士業のAI代替可能性は以下のように紹介されています。
士業 | AIによる 代替可能性(%) | 資格試験の 合格率(%) | 主な業務 |
---|---|---|---|
弁護士 | 1.4% | ※25.9 | 訴訟代理などの法律事務 |
司法書士 | 78.0 | 3.9 | 登記や供託に関する手続き |
弁理士 | 92.1 | 7.0 | 特許などの出願・登録手続き |
行政書士 | 93.1 | 9.9 | 官公署に提出する書類の作成 |
公認会計士 | 85.9 | 10.8 | 財務書類の監査・証明 |
税理士 | 92.5 | 15.8 | 税務書類の作成や税務相談 |
社会保険労務士 | 79.7 | 4.4 | 労務・社会保険に関する書類の作成 |
中小企業診断士 | 0.2 | 3.4 | 中小企業の経営コンサルティング |
なんと、中小企業診断士は弁護士よりさらに代替可能性が低い0.2%とされています。
つまり、将来的にも中小企業診断士はAIに代替されにくい士業であると言え、長期的にも独立することに対しての不安感はないですね。
ただし、注意点としては、この判断基準がコンサルティング業務を中心に判断されたという点です。
コンサルティング業は、AIが苦手とするマニュアル化された判断ではない価値を提供する点を評価されており、補助金業務やある程度型にハマった仕事をしているとAIに代替される可能性があると言えます。
従って、前述した「顧問契約」を獲得し、コンサルタントとして価値を提供することを目指すことがやはりオススメと言えます。
中小企業診断士の資格取得は難しい?
ここまで中小企業診断士の年収に関して紹介し、高い報酬や将来性があることを踏まえて、中小企業診断士を取得したい!取得はどのくらい難しいの?と思った方もいるかもしれません。
中小企業診断士の試験の難易度等は以下のようになっています。
【合格率】約4〜6%(1次試験:約20〜40%、2次試験:約20%)
【平均勉強】約1,000時間(社労士と同程度)
【教科数】1次試験:7科目、2次試験:4科目
1,000時間の勉強時間を確保し、1年で合格を狙う場合は、1日平均3時間程度勉強する必要があります。
この点だけを切り取って伝えると、ハードルが上がりますが、前述の通り中小企業診断士を取得されている多くの方は、企業に勤めている方が大半で、筆者の知り合いでは仕事と育児、家事をしながら取得された方も見てきました。
このことからもしっかりと受験勉強を確保して、実直に取り組めば合格ラインに達するということがわかると思います。
しかし、その勉強時間が確保できない!という方もいると思いますので、その方におすすめなのがオンライン講座です。
通学時など、ご自身の好きなタイミングで授業が受講できるため、効率がよく、また費用も通学と比較しても5分の1程度とコストパフォーマンスが非常に高いです。
ぜひこちらの記事を参考に、受験を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は中小企業診断士の年収について紹介してきましたが、結論は「中小企業診断士は高年収を狙え、独立も十分可能」です。
今の年収に不満があって、年収をもっと高くしたいという方、将来的に独立したいなと思っている方などの参考になれば嬉しいです。